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2016年05月21日

働いて報酬を得るデイサービス「DAYS BLG!」(NPO法人町田市つながりの開)≪後編≫

言われなくても、テキパキと作業をこなすメンバーたち

(※前編をお読みでない方は是非前編からお読みください!)

というわけで、「Honda Cars東京中央」に到着。クルマから降りると、メンバーの皆さんはすぐに作業に取りかかります。ある人は水道からホースを引っ張ってきて、ある人は倉庫からバケツと雑巾を持ってくる、というように、誰かに指示されることもなく、めいめいがテキパキと動いて、いや~皆さん、慣れたもんですね。その働く姿からは、とてもこの中に認知症の方が混じっているとは思えません。

 でも、まあ、作業自体はただ駐車場に止まっているクルマにホースで水をかけて、布で拭くというだけの単純なもの。やり方や手順の説明がないとできないものでもありません。また、洗うクルマの台数もとくに決まっているわけではなく、その日、とりあえず行ってみて、駐車場に停まっているだけのクルマを洗うようです。時間も決まっておらず、台数が少なくてすぐ終わる日もあれば、結構時間がかかってしまう日もあるそうです。こうしたユルさがちょうどいいんでしょうね。今日は○台洗いなさい、とか、ノルマを課せられたりすると、ちょっとしんどくなりますものねえ。

 とはいえ、単純な洗車でも実際にやってみると、意外と大変ですよ。私お探し介護ライターも、ボーっと見ているだけでは申し訳ないので少し手伝いましたが、水は冷たいし、クルマの屋根など手の届かないところまで拭くのは結構骨が折れます。そうして小一時間ほど働いたでしょうか。「今日は人数が多いからすぐ終わりますよ」というスタッフの方の言葉通り、ほどよく「働いたなあ」という感覚を得たぐらいで作業終了。帰り支度もテキパキと済ませ、「Honda Cars東京中央」を後にします。

 その前に、仕事を発注している側である「Honda Cars東京中央」ではどう考えているのか。予定はしていなかったのですが、気になったので、ちょっと店長さんに話を伺ってみました

■「なかなか手が回らないところをやっていただいて、助かってます」(Honda Cars東京中央・山本融店長)

 「仕事をお願いしているのは私がここへ来る前からなので、詳しい経緯はわかりませんが、当時、BLG!さんがウチのすぐ近くにあったことで、BLG!さんの方から話が持ち込まれたと聞いております」という山本店長。「洗車は、大切なクルマをいつもキレイにしておくための大事な作業なんですが、私たちだけではなかなか手が回らないところもありますので、こうやって皆さんに一生懸命やっていただいて、大変助かっています」とのこと。今までとくにトラブルもないし、近隣の住民などからの評判も良いそうです。「Honda Cars東京中央」と「DAYS BLG!」の関係は良好といっていいでしょう。

 しかーし、ですよ。あらかじめ「DAYS BLG!」に関心を持っていてこの記事を読み始めた読者の方なら、本当に知りたいのはそういうことではないですよね。

逆に何も知らないままこの記事を読んで下さっている方のために説明しますと、冒頭で「DAYS BLG!」は認知症の方に対してユニークな取り組みを行っている、と紹介しましたが、その中でもひときわ世間の注目を集めているのが、「認知症の人が働いて報酬を得ている」ことなんです。このことにすごく興味を持ったからこそ、取材を申し込んだわけで、この記事の主題もこのへんにあります。

「認知症の人(すなわち介護保険の被保険者)が、働いて報酬を得る」とはどういうことなのか? その現状を取材するのが今回の目的。となると、仕事を発注=報酬を払う側はどんな見方、どんな考え方をしているか、ということも知りたいですよね?

 したがって、本当に山本店長に質問したかったのは、こういうことです。「BLG!が今やっている仕事は、報酬に見合っていると思いますか?」。でも、残念ながらそこまでは聞けませんでした。なぜなら、アポもなしの不躾な取材にも関わらず、快く応じて下さった山本店長にいきなりそこまで突っ込んだ質問をするのがはばかられたこともありますが、何より、そもそも「Honda Cars東京中央」から頂いてる報酬がいま幾らなのか、という肝心なことをその時点では知らなかったからです。金額も知らないのに、それ以上突っ込んだ話はできないし、その金額を初対面の人に聞くわけにはいかないですし。もしかしたら、金額を公表していない可能性もありますから。

それにしても、何事もそうなんですが、とくにこうしたデリケートな取材では、準備というか、予備知識の仕入れが大事。分かっていたことですが、今回はうっかりしてしまいました。反省して、もし次の機会があれば、しっかり取材して、皆さんが本当に知りたいことに応えられるよう努力致します。

Honda Cars東京中央
Honda Cars東京中央に到着してすぐホースの準備
ディーラーに展示してある車を洗車する

「pay for paformance」をいかにして上げていくかが課題

ということで、またクルマに乗って、「Honda Cars東京中央」へ帰宅。途中、内食組のために、お弁当屋によって弁当を買います。外食組もいったん帰宅し、その後どこかのお店に出かけるようです。今日は結局、どの店へ行くことにしたんでしょうかね?

 さて、一緒に帰宅した私たちは、いよいよ前田隆行所長に少しお時間をいただいて、お話を伺うことに。メンバーの皆さんは、お茶の時間のようで、皆でお茶を飲みながらなごやかに談笑しています。
 さて、本題に入る前に、先ほどから気になっていた、「Honda Cars東京中央」からの報酬額を恐る恐る聞いてみました。すると意外にもあっさりと、「月1万円です」と教えてくれました。なんだ、非公開じゃないんですね。ホンダへ行く前に聞いておきゃよかった(笑)。そしたら「Honda Cars東京中央」の山本店長にももう少し突っ込んだ質問ができたのに。後悔先に立たず、ですね。

 それにしても、月1万円ですか。これをどう捉えるかは意見の分かれるところでしょうね。すべてメンバーの働きに応じて分配するそうですが、それでも1人が受け取る額は1000円にも満たないと思われます。個人的には、あれだけ真面目に仕事しているのだから、もう少しあげてもいいんじゃないか、という気がしないでもありません。はっきりとは言いませんが、前田所長もそう考えているらしく、もうちょっと上げてくれるよう交渉したい、というようなことは匂わせていました。

 でも、仕事を発注=報酬を払う側からしたら、もしかしたらこれぐらいが妥当、もしくは、これでもいい方だろう、という意見があるかもしれません。たとえば今日の「Honda Cars東京中央」の洗車にしても、今日は○台洗いなさい、といったノルマがなく、出勤する人数や時間などの制限もとくにないからこの金額であって、この金額を上げるとなると、話が違ってくる可能性はあります。ある程度の額を払うのであれば、ちゃんとシフトを組んで出勤して、1日最低○台は洗う、というような決め事を求められることもあるでしょう。利益を追求しなければならない企業は、常に費用対効果を求めますから、そうした考え方になるのは致し方ありません。

これについて、前田所長は「pay for paformance(ペイフォーパフォーマンス)」という言葉をキーワードとして挙げ、「いかにしてpay for paformanceを上げていくか。それが課題だ」と言います。認知症の人が「働く」というのは、「社会とつながり」「地域での役割を果たす」ため。でも、だったらボランティアでいいわけです。しかし、中にはボランティアではなく、「働いて報酬を得る」ことに喜びや生きがいを見出す認知症の人もいます。そのための活動をしているのが「DAYS BLG!」なのですから、前田所長としては、認知症の人でもできる範囲の仕事が前提なのでそう多くは望めないにしても、せめて、得ることに喜びを感じられるぐらいの金額の報酬はほしい。だから「pay for paformance」を上げていかなくてはいけない、ということだと思います。

■認知症の人と一緒に「働く場をつくる」ことが社会貢献になる、と評価される社会へ

要は、認知症でもできる範囲の仕事に対し、企業がどの程度なら報酬を支払ってもいいと考えるか。その折り合いだと思いますが、これは大変難しい問題です。職種や職場によってもずいぶん違ってくるでしょうし、人によってもあらゆる考え方があって、このへんが相場といえるものはなさそうです。

ここで一つ、個人的な意見を言わせていただくと、企業側の人は、この問題に関しては、単なる費用対効果だけで判断してほしくはないな、と思います。前田所長の言う「pay for paformance」のパフォーマンスには、業務そのものだけでなく、認知症当事者と一緒に「働く場をつくる」ことで得られる社会的評価、あるいは社会貢献といったものも含まれる、と考えていただきたいのです。

「Honda Cars東京中央」の山本店長がこう言ってました。「洗車しているBLG!の人たちを見たお客様から、あの人たちは? と聞かれまして、わけを話すと、ああ、それはいいことですね、とおっしゃっていただいたことがあります」。

そうして「Honda Cars東京中央」の評価が高まるのであれば、報酬を支払う価値もあるというものでしょう、その報酬額はさておいて。そのためには、世間の皆さんがもっと認知症に関心を持って、「認知症当事者が働いて報酬を得る」ことに賛成する人が増えていくことが大事です。認知症の人と一緒に仕事をする機会をつくっていく企業に対し、社会がそれを社会貢献と認め、高く評価する。そういう社会になれば、認知症の人が働くことの「pay for paformance」も上がり、報酬も上がっていくでしょうね。そんな社会に早くなってほしい、と切に思います。

「pay for paformance」をいかにして上げていくかが課題
ホースで水をかける
「pay for paformance」をいかにして上げていくかが課題
真冬の時期は水仕事はとても大変
「pay for paformance」をいかにして上げていくかが課題
水を×人と拭く人と自然に役割がわかれる

認知症になっても活き活きと、生きがいを持って生活できる社会を

話が逸れました。前田所長の話に戻りましょう。

 そもそも前田所長は、どういう経緯で「DAYS BLG!」を立ち上げたのか? 個人的にも読者的にも気になるところでしょうが、そんなそもそものはじまりから話している時間はない、とのことなので(ここでも準備不足を露呈してしまいました、反省しています)、以下の記事は、当日、前田所長に伺った話と合わせて、後日、資料などで調べた情報をもとにして私が推測で書いた部分も多々ありますことを予めご了承願います。

 前田隆行所長は1976年生まれ。神奈川県藤沢市出身。老年精神科病院の病棟や、E型デイサービスの管理者を経て、若年性認知症デイサービス「おりづる工務店」創設。と、プロフィールにはあります。

 そうした経歴の中で、前田さんは、認知症当事者の手足を縛りつけて拘束するなど、悲惨な現場を目の当たりにしてきました。人は、認知症と診断された、ただそれだけで、本人の意思をないがしろにされたり、望まないことを無理に強制されたり、ときには人間としての尊厳を踏みにじられることさえある。そんな現状に疑問を抱き、なんとか変えていきたい、という思いが前田さんの活動の出発点であることは間違いないでしょう。

 認知症は誰にでも起こる可能性があります。なのに、認知症になった途端、普通の人ではなくなるという今の社会は間違っている。認知症になっても明るく活き活きと、生きがいをもって生活していけるような環境をつくらないといけない。そのために、前田さんは、認知症となった人が「ここが自分の居場所」だと思えるような場所をつくりたい、と考えました。無理やり通わされるのではなく、本人の意思により自ら進んで通いたくなるような「自分の居場所」となるデイサービスを。では、どんなデイサービスであれば、認知症の人が自分の居場所と思えるのか。その答えのひとつが、「働く」ことだったのです。
「“働く”ことによって社会とつながり、地域での役割を果たしたい。また、働いて得られる報酬を使うことで、消費者=生活者となりたい。そんな想いを持っているのは認知症の方々も同じなんです。“自分の居場所”とは、その想いを結びつける場所、だと思います。人にはやはり自分の居場所が必要なんです。だから私は、定年退職したり、認知症になったりして、自分の居場所を失っている人たちに、『ここが自分の居場所だ』と思ってもらえるような施設をつくりたかったのです」(前田さん)

 うん、素晴らしいですね。認知症の方々にとっての「自分の居場所」をつくりたい、という想いもさることながら、それがすなわち「働く」ことである、と見抜いたところが慧眼です。これは冒頭に紹介したリーフレットの文面にもあったように、「認知症を自分事」として捉え、「もし自分が認知症になったら」と考えた中から出てきた発想でしょうね。

■2011年、厚生労働省が介護保険サービス利用中のボランティア活動に対し、謝礼の受け取りを認める

 そんな前田さんの想いを具体化したのが「DAYS BLG!」というわけですが、じつはこれが初めてではありません。設立年等の詳細は不明ですが、「おりづる苑せりがや」というデイサービスの一部門として、「おりづる工務店」を設立。工務店の名の通り、デイサービス利用者を工務店の店員と想定し、市内の保育園で庭の掃除や剪定、壁などペンキ塗り、落書き消し、砂場掘り起こし、そしてプール清掃などの活動を行っています。その当時でも結構話題になったようですが、寡聞にして知りませんでした。認知症でも働こうという取り組みは、じつはかなり前からあったんですねえ。

 ただし、当時は、介護保険の被保険者が働いて収入を得るのはいかがなものか、ということで、労働の対価として謝礼を受け取ることが認められていませんでした。したがって活動はすべて無償ボランティア。つまり謝礼も報酬も0円です。これでは、前田さんの想いの半分しか実現していないことになります。大きな法の壁が、前田さんの目に前に立ち塞がっていたのです。
 これをなんとかしようと、前田さんは頑張ります。かけあったのは、厚生労働省。前例のないことですから、地方ではなく国の管轄ということになるのでしょう。前田さんは霞ヶ関にある厚生労働省まで、何度も何度も出向いたといいます。また、2006年の認知症の人「本人会議」など、全国各地で行われるシンポジウムやセミナーなどで、当事者の声を全国へ発信。その頃すでに前田さんはそうしたシンポジウムなどに招かれ、講演したりすることもあったようですね。さらに、全国の認知症を支援する団体等に呼びかけて提言してもらうといった、ありとあらゆる方面からのアプローチを試みました。

 そして厚生労働省に通い続けること5年。前田さんの根気よく粘り強い活動が実を結び、2011年4月、ついに厚生労働省より、介護保険サービス利用中のボランティア活動に対し、謝礼の受け取りを認める通知が出されました。

 それによると、ボランティア活動で謝礼を受け取ることについては、厚生労働省「若年性認知症施策を推進するための意見交換会」において、下記の条件をすべて満たす場合は差し支えないとされています。

①当該謝礼が労働基準法第11条に規定する賃金に該当しないこと
②社会参加型のメニューを提供する介護サービス事業所において、介護サービスを利用する若年性認知症の方がボランティア活動を遂行するための見守りやフォローなどを行うこと

なお、ボランティア活動の謝礼は、若年性認知症の方に対するものであると考えられ、介護サービス事業所が受領することは介護報酬との関係において適切でないと考えることを申し添えます。

なんだか難しそうですが、まあ、要するに労働基準法で定められた賃金以下なら受け取っていいよ、ということでしょう。しかし、受け取るのはあくまで認知症の方本人で、事業所がその見守りやフォローなどをしたからといって、その分を謝礼からピンハネするのはよくないよ、ということですね。

でもこれ、穿った見方をすれば、事業所によっては「それならやんないよ」というところも出てくることが考えられます。だって、事業所にしてみれば、余計な手間や時間がかかるのに収入は増えないわけですから。そのせいかどうかはわかりませんが、この通知が出されたからといって、認知症の有償ボランティアが全国に広がる、といったことにはなりませんでした。業界内にいても、こういう通知が出たことさえ知らなかった、という人も多いのではないでしょうか。

■洗車から玉ねぎの皮むきまで、仕事の種類はさまざま

 このとき、前田さんはどうしていたかというと、一旦現場を退いていたそうです。何かの事情というよりは、国の方針を変えることに成功した時点で自分の仕事は一段落、あとは後進に委ねよう、という気持ちがあったと想像できます。しかし、何事も思い通りにはいかないのが世の常。せっかく認知症の有償ボランティアを国が認めたというのに、それが県や市町村、地方自治体などに降りてくる時点で広められることがない状況に苛立ったのか、このままでは活動が後退してしまうという危機感からか、前田さんは、「だったら言いだしっぺの自分がやるしかない!」と、新たにデイサービスを立ち上げます。それが現在の「DAYS BLG!」というわけです。

 このようにしてはじまった「DAYS BLG!」の有償ボランティアは、もちろん今回取材した「自動車ディーラーでの洗車」だけではありません。その種類はじつに多岐にわたります。たとえば、「玉ねぎの皮むき」は、納品先から「皮をむいた状態で納品してほしい」と言われた問屋さんが、そのための人手や時間がない、ということで「DAYS BLG!」に依頼された仕事。これが評判を呼んだことから、“この玉ねぎはBLGの皆さんがむきました”というシールを貼り、『BLG玉ねぎ』というブランドとして売られているそうです。ちなみにその謝礼は玉ねぎ1個あたり10円。一箱で500円くらいになるようです。

 他にも青果問屋からの依頼による野菜の配達、カラオケ店の敷地の草取り、保育園での雑巾縫いなど、さまざまです。参考までに、「DAYS BLG!」に仕事を依頼した場合の謝礼の一覧を資料の中から見つけたので、紹介してみましょう。
・野菜の配達――450円/1時間 ・企業の営業車両洗車――1000円/1台 ・商店街の自治会の花壇整備――1000円/1回 地域の高齢者宅の庭整備――5000円/3日 門松制作――20000円/3ヶ月 ・認知症講演会――不定
 このうち、企業の営業車両の洗車は、「Honda Cars東京中央」のように台数ではなく、月にいくらといったケースもありますから、まあ、応相談ということでしょう。条件や状況によってもかなりの変動があるようです。あくまで目安とお考えください。

■有償&無償ボランティアだけでなく、世代間交流やまちづくり、趣味活動も

 また、働いて謝礼を受け取る有償ボランティアばかりに注目が集まりがちですが、「DAYS BLG!」では有償だけでなく、無償のボランティアも熱心に行っています。たとえば学童保育や保育園での「紙芝居の読み聞かせ」は、メンバーの中に元アナウンサーがいたことからはじまったもの。いいことですよね。自分の経歴や特技を生かしたボランティア活動ができるのは。有償ボランティアが謝礼(=報酬)を得るための「仕事」だとすると、無償ボランティアは「社会における役割」と位置づけられます。

「当施設では“働く”ということをコンセプトとしていますが、それは単に仕事をするという意味ではなく、もっと広い意味での“働く”ことと捉えています」と前田さん。「DAYS BLG!」ではその他にも、世代間交流として、1~2歳の未就学児の母親たちが集まり、メンバーが子供たちの面倒をみたり、母親の子育てに関する悩みを話し合ったりする「子育てサロン」、近所の子供たちが相手の「駄菓子屋」、まちづくり活動として、認知症に関する「講演会」など、じつにさまざまな活動を行っています。加えて、公園などでの散策やバッティングセンター、ゴルフ打ちっ放しといった趣味活動も。本人がやりたいことをやるのが大事ですからね。

 以上の「DAYS BLG!」の活動内容をまとめて整理しますと、①有償ボランティア(仕事) ②無償ボランティア(社会における役割) ③世代間交流(駄菓子屋経営、子育てサロン) ④趣味活動(公園散策等) ⑤まちづくり活動(認知症当事者の語りが中心の勉強会や講演会等)といった5つに分けられます。今回の取材では①の有償ボランティアをクローズアップしたわけですが、働いて謝礼を得ることは、目的ではなく、メンバーの想いを実現するための手段の一つに過ぎません。目的はあくまで、メンバーの皆が生きがいをもって、活き活きとした生活を送ることにありますから、この5本柱のバランスも大事ということだと思います。

「世の中には、いま認知症の人と、これから認知症になる人の2通りしかいません。絶対に認知症にならない、という人はいないのです。だからこそ、認知症になる前に、もし自分が認知症になったらどうなるか、と考え、関心を持ってほしい。そして、たとえ認知症になったとしても、生きがいを持って活き活きと暮らせるような社会をつくらなくてはいけない。そう思って活動しています」と、熱く語ってくれた前田さん。私たちの取材に対して、最初はちょっと面倒臭そうな態度も感じたのですが(なにしろ世間の注目を集めていますから、こうした取材もうんざりするほど受けているとみえます。ご多忙の中ですいませんでした!)、話しているうちに段々と熱が入ってきたようです。一見飄々としてクールそうに見えますが、やはり芯は熱い人なんでしょう。またそんな人じゃないと、こうした活動はできないと思いました。

 とはいえ、まだまだ課題は多いと言います。目下最大の悩みは、賛同してくれる企業が少ないこと。常に新しい企業を探し求めていますが、話がまとまるのは200社以上にアプローチした中で1社あるかないか、という状況だとか。
それでも、詳細は明かせませんが、たとえばコクヨや大日本印刷といった大手企業とコラボしての商品開発だとか、社員研修だとか、進行中のプロジェクトはいくつかあるようです。実現した暁にはまたぜひ取材させてください、前田さん! 

 最後に、こうした取り組みは、他でもやってほしいと思いますか? と聞くと、「もちろんです。どんどん広がっていって、社会を変えてほしいですね」との答え。そのために、こうした取材も受けてくれたんでしょうね。その期待に応え、この記事で前田さんの熱い想いを読者にどれだけ伝えられるのか、自信はありませんが、そんなこともあっていつも以上に長々と書いてしまいました。長文にも関わらず、最後まで読んで下さって本当にありがとうございます。そして、「DAYS BLG!」の今後にもぜひご注目ください。

認知症になっても活き活きと、生きがいを持って生活できる社会を
細かい部分までしっかりと吹き上げるメンバー
認知症になっても活き活きと、生きがいを持って生活できる社会を
内食組のために、お弁当屋によって弁当を買うメンバー
認知症になっても活き活きと、生きがいを持って生活できる社会を
NPO法人町田市つながりの開 DAYS BLG!所長で理事長の前田隆行さん

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