ホーム選びに役立つ 18年度改正のポイント
ポイント1 大きく変わった有料老人ホームの定義
これまでは老人福祉法の中で「常時10人以上の老人を入所させ、食事の提供その他日常生活上、必要な便宜を供することを目的とする施設であって、老人福祉施設ではないもの」と定義されていました。つまり、特養ホームなどの福祉施設以外で、(1)常時10人以上の高齢者が暮らしていること、(2)食事を提供していること、という2点の基準を満たすものが有料老人ホームとして届け出が義務づけられていました。しかし、食事を外部委託したり、人数を9名単位にしたような類似施設が乱立し、この趣旨を悪用し高齢者の弱みに付け込んだ悪徳業者や関連会社の訪問介護サービスを利用して不当に介護報酬を請求する事業者が横行するようになったために、老人福祉法上の定義が改正されました。 平成18年4月以降は、「10人以上としている人数要件を廃止するとともに、(1)食事の提供、(2)入浴・排泄または食事の介護、(3)その他日常生活上必要な便宜であって厚生労働省で定めるもの、のいずれかのサービスを提供する事業を行う施設を対象とする」とされています。厚生省令で定める日常生活上必要な便宜とは、「洗濯・掃除等の家事」「健康管理」が予定されています。
つまり、有料老人ホームとは、人数に関わりなく特養ホーム等の福祉施設や認知症グループホーム、また別途登録された高齢者専用賃貸住宅以外で、(1)食事の提供、(2)入浴・排泄または食事の介護、(3)洗濯・掃除等の家事、(4)健康管理のいずれかのサービスを提供していれば、有料老人ホームに該当することになります。
届け出されるということは、様々な基準に従って行政から指導・監督を受けるということですから、入居者にとっては一つ安心が付加されることになります。ケアホーム、ケア付住宅、介護ホーム等、様々な名称のものがありますが、行政に届け出されているのか否かは、有料老人ホームを選ぶ上で、重要なポイントです。
ポイント2 強化された防火・防災対策
長崎県大村市のグループホームで、入居者9名の内7名が亡くなるという痛ましい火災が起こりましたが、実際、夜間にこのような大きな火災が発生すれば、特に要介護状態の高齢者の場合、自力で逃げ出せる人はほとんどありませんから、大きな犠牲を伴うことになります。これまでも基本的には耐火建築物・準耐火建築物であることが求められていたのですが、今回の改定では、有料老人ホームの設置においても、スプリンクラーの設置、難燃性の材料の使用、非常警報装置の設置など、防火・防災体制の強化に重点が置かれています。
ホーム選定にあたっては、これらの防災設備が整っているのか、また設備だけでなく、実際に火災訓練や防災訓練がしっかり行われているのかをチェックすることが必要です。中には消防設備も未整備で、避難訓練を一度も行っていないようなホームもありますが、それでは入居者の生命に対する危機管理が著しく欠けていると言わざるをえません。逆に、避難訓練や夜間想定訓練等を繰り返し、消防署から表彰を受けているようなホームは、その他の危機管理やサービスの向上にも力を入れているはずです。
防災体制のチェックは、有事の際に備えてチェックするだけでなく、そのホームの経営体質を見る上でも重要なポイントなのです。
ポイント3 サービス内容・記録の保全義務化
これまで有料老人ホームで行ったサービス内容についての記録は、保全義務がなかったため、実際にどのようなサービスが提供されているのかがわからないホームもあったのですが、今回の改定で、以下の通り必要書類の保存が義務づけられました。帳簿の保存期間と記載事項
・帳簿の保存期間は作成の日から2年とする。
・一時金・利用料等、入居者が負担する費用の受領の記録
・入居者に提供したサービスの内容
・緊急やむを得ず入居者に身体的拘束を行った場合の、その態様・時間・入居者
の心身の状況、緊急やむを得ない理由
・サービスに関する入居者や家族からの苦情
・サービス提供により事故が発生した場合のその状況・処置の内容
・サービスの提供を委託により他の事業者に行わせる場合、当該事業者の名称・所在地・委託に関わ 骭_約事項・業務の実施状況
これは、病院でのカルテのようなもので、特に事故やトラブルが起こった場合、その原因や対応に問題がなかったかを知ることができるため、入居者や家族だけでなくホームのスタッフにとっても重要なものです。また、家族からのクレームやその対処方法、結果についても記載されることになっています。
生活や介護サービスは何年も継続していくものですから、サービス向上のためにも入居者や家族の情報を積み上げていくことは重要なことです。個人情報保護の観点から他の入居者の記録を見ることはできませんが、優秀なホームでは必ずこの記録体制が整備されていますので、その中身について見学時に確認されると良いでしょう
ポイント4 入居一時金の保全措置の義務化
多くの有料老人ホームでは、数百万円〜数千万円の入居一時金を徴収していますが、この入居一時金には、家賃の前払金という意味を持たせており、老人ホームの定めた一定期間(償却期間)で償却され、この償却期間内で退居された場合は、未償却部分が返還金として入居者や身元保証人に返却されるというのが一般的です。しかし、有料老人ホームの中には、入居一時金をそのまま建設費用の返済や運転資金に充当しているところも多く、途中で倒産した場合には、入居者の返還金が保全されず入居者のその後の生活に多大な被害を及ぼすというケースも増えています。
このため今回の法改正で『入居者から一時金を受けている有料老人ホームは、その算定根拠を書面で明示するとともに、倒産などの場合に備えて、厚生労働省令で定める方法で、必要な保全措置を定めなければならない』としています。これにより平成18年4月以降に開設される有料老人ホームでは、未償却部分の返還金の500万円を上限として保全しておかなければならないことになりました。これは家賃だけでなく、介護一時金等もその対象になります。
保全方法としては、(1)供託所への供託 (2)銀行への連帯保証 (3)民間損害保険の活用の他、『全国有料老人ホーム協会』の基金の活用、指定格付機関(ムーディーズ等)による特定各付が付与された優良企業(親会社)の保障等が検討されています。
この保全義務は、法改正後(平成18年4月)以降に届け出を行う有料老人ホームのみに適応されるようですが、一定の基準が示されたことにより、当然現在経営中の有料老人ホームに対しても十分に確認する必要があります。また、法的な保全義務には500万円ですが、3000万円支払って500万円しか戻らないとなれば大きな問題です。
有料老人ホーム選びにおいては、この保全措置がとられているのか、また独自にどのような保全方法をとっているのか、経営は安定しているのか等をしっかりチェックする必要があるのです。
ポイント5 短期間で退居する場合の入居一時金返還の規定
トラブル事例の中でも解説しましたが、有料老人ホームを取り巻くトラブルの中で多いのが、入居一時金の返還にかかるものです。一般的にこの入居一時金は、家賃の前払いとしての性格を有している場合が多く、途中で退居する場合には、その入居期間に応じてその一部が返還されます。しかし、その返還金の計算方法や計算根拠については、各ホームで取り決めが違いますので、高額の入居一時金の有料老人ホームに入居後、短期間で亡くなったり、何らかの事情で退居する場合、その金額をめぐってのトラブルが発生しています。国民生活センターの調べでも、1カ月以内に解約した際に体験入居の料金に換算して残金は全額返金するといったホームは、全体の7.2%に過ぎません。中には、契約時に徴収される初期償却が過大であったり、数週間入居するだけで一時金が全く戻らないというホームもあります。
これらのトラブルを受け、今回の制度改正では2006年7月以降は、契約締結から90日以内の解約の場合は、利用料や原状回復費用等は除き入居一時金全額を入居者に返還するように求めています。しかし、経営の根幹に関わることから、すべてのホームがこの規定に従うのかどうかも不明な状況です。
有料老人ホームを選ぶ際には、この改定内容が遵守されているのかを確認すると同時に、契約書をしっかり確認し、1ヶ月で退居する場合、1年で退居する場合に、どの程度返還されるのかを事前に計算しておく必要があるのです。
ポイント6 書面による重要事項説明書の交付
有料老人ホームは、特別養護老人ホーム等のような福祉施設ではありませんから、途中で倒産したりサービスが契約通りに行われない等のトラブルが発生しても、基本的には個人の責任で解決する必要あります。これまで、『一律の行政指導はなじまない』という立場から、行政は有料老人ホームに対して行政監視や指導をほとんど行ってきませんでした。しかし、その結果として、美辞麗句や誤解を招きかねないような曖昧な広告が多くなり、『サービス内容が説明と違う』といったトラブルが多く発生する状態になっています。
契約書や重要事項説明書は、事前に交付しお互いにその内容を熟知した上で、印鑑を押すもので、特にホームによってサービス内容が違いますので、しっかりとその内容を確認する必要があります。しかし、国民生活センターの調査によると、「入居契約をする際に、渡す」という有料老人ホームが76.1%と最も多く、何と「入居契約後に渡す」というホームも3.4%存在することが明らかになりました。 また「請求があれば入居申し込み前に渡す」というホームは69.1%程度で、「ホームページ上に公開している」というホームは9.0%にすぎません。
そのため、今回の老人福祉法の改定では、『情報開示の徹底』を打ち出しており、重要事項の説明内容については、法律で規定し書面にて明示することを義務付けています。これには、サービス内容や価格だけでなく、一時入居金の保全内容や途中退居者数なども含まれていますし、その他、財務諸表等の経営内容についても、必要であれば開示することが求められています。
『安心・快適』というのは、主観的なものでサービス内容が示されたものではありません。有料老人ホーム選びにおいては、これらの情報をもとに、わからない点や疑問的については、入居者や家族がしっかりと確認する必要があります。事前に重要事項説明書や契約書を渡せないホームは信用でないホームであると言って良いでしょう。
ポイント7 医療法人の有料老人ホーム事業参入
これまでも実質的に医療法人のグループ企業として老人ホームを経営するところもありましたが、老人ホーム事業を経営するためには社会福祉法人や株式会社を別に設立して、土地や建物の権利関係を別にすることが必要でした。しかし、今後は病院を改装し『1階が外来診療、2〜3階が入院病床、4〜6階が有料老人ホーム』といった混合スタイルの有料老人ホームが増えていきます。医療法人の強みを活かして、酸素吸入やIVHなど医療ニーズの高い高齢者にも対応できる有料老人ホームや、病院の特徴を生かした糖尿病や人工透析等の慢性疾患の高齢者専用のホームも開設されるでしょう。
介護保険制度を契機に開設された有料老人ホームの多くは、『介護サービス』のみに重点が置かれていますが、長期入院を削減して『入院から在宅へ』を推進するということは、これまで入院対象だった状態の高齢者を、自宅や有料老人ホームで対応しなければならないということです。 現在でも、『協力病院があります』『提携病院で安心です』と謳っている有料老人ホームが多いのですが、実際は病気になったら病院に丸投げというホームがほとんどで、入居者から医療体制に対するクレームや不満が多いのも事実です。高齢者の医療や医師に対する信頼は高いですから、医療ニーズに対応できる医療法人経営の有料老人ホームは、介護サービスだけの有料老人ホームにとっては大きな脅威となるでしょう。 これからの有料老人ホームには、ターミナルケア等の24時間の医療体制の確保が非常に重要になってきます。介護サービスだけではなく、医療サービスがどの程度充実しているのかもホー選びには重要なポイントになります。






