11月1日に、高齢者虐待防止・養護者支援法が成立しました。
同法では、身体的虐待や養護の放棄、心理的虐待、性的虐待、財産の無断使用を虐待として定義しており、虐待により、高齢者の生命や身体に重大な危険が生じている場合、市町村長に自宅などへの立ち入り調査を認めるほか、そうした高齢者を発見した施設職員らには、市町村への通報を義務付けています。
虐待と言えば、現在、児童虐待が大きくクローズアップされていますが、この高齢者虐待についても、高齢者人口、特に要介護高齢者の増加とともに、増加の傾向をたどっており、大きな社会問題となっています。
成立に、少し手間取ったと言う感は否めませんが、ともあれ定義や市町村の役割、警察との連携、立ち入り調査等を規定した法律が定められたことは、一定の前進だと言えます。しかし法律の制定だけで、虐待がなくなるというものではありません。
老人ホーム等の施設内の虐待も対象とされていますが、やはり多いのは『介護拒否』を含め、家族や介護者から受ける虐待です。この虐待の内容については、いくつかの分類は可能ですが、それぞれにそれぞれの原因や理由があります。頭が下がるほどの献身的な介護をされていた家族が、ある日突然切れてしまうこともありますし、虐待をされている高齢者が虐待する家族を庇うといったケースもたくさんあります。多くの方は『とんでもない家族だ』と思われるかもしれませんが、家族だけの責任だけではないというケースも多いのです。しかし、その結果、『もう少し様子を見て』『家族と話し合って』と問題が先送りされ、虐待死や取り返しのつかない状況になるというのが、児童虐待を見ていても良くわかります。
それぞれのケースをしっかり見ていくということがケースワークの基本なのですが、特に虐待が明らかでや命に関わる可能性のある場合、『すぐに離す』『とりあえず離す』ということが必要だと思っています。残念ながら、責任の所在やプライバシーを云々しているような状況ではないのです。
この強制は民間ではできません。これは行政措置の問題です。そして、ここにこれからの社会福祉法人の大きな役割があると思っています。地域包括支援センター等に、高齢者虐待防止支援センター等の業務を委託するようですが、現在の業務でさえ大変な状態の支援センターだけで、この問題を抱えることは、実質的に不可能です。
この問題の解決には、必ず中長期的な保護施設は不可欠です。介護保険制度に移行しても、特別養護老人ホームには、行政の措置枠が残っています。ある程度の市町村には虐待対応専門の特養ホームを指定し、行政と福祉の立場で、ある程度の強制力と機動力を持ったチーム編成を検討する必要があるでしょう。
虐待は、本人にとっても家族にとっても身体的にも精神的にも追い詰められていきます。制度や仕組みをつくるだけでは、何の解決にもなりません。家族や高齢者を追い詰めないように、相談窓口や介護サービスを充実させるとともに、国レベルではなく、各市町村で、この問題にはしっかり腰をすえて取り組んでいただきたいと思います。
2005年11月07日 10:59
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.osagashi-kaigo.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/15