2008年度から新しく創設が予定されている、高齢者医療制度ですが、高齢者が窓口で支払う医療費の自己負担割合を引き上げることになりそうです。
現在の窓口負担は、70歳未満が3割負担、70歳以上が1割負担(現役所得並の高齢者は2割)となっていますが、厚生労働省が先月示した試案では、高齢者医療制度を65歳〜74歳の前期高齢者を対象としたものと75歳以上の後期高齢者を対象としたものの2段階に分けるとされており、08年度から、65歳未満3割、65〜74歳2割、75歳以上1割としており、現役所得並の高齢者は、2006年から3割負担となります。
この後期高齢者の医療制度の実施主体(つまり保険者)については、まだ協議が行われていますが、介護保険制度と同様に、各市町村単位となる可能性が高く、高齢者の多い市町村にとっては、頭の痛い問題です。
この負担割合の変更で、考えられるポイントは2つあります。
一つは、前回のコラムでもあげた医療療養病床と介護療養病床の問題です。これまで、食事負担やホテルコストの問題で、同じ環境で同じようなサービスを受けていても、医療保険対象の療養病床の自己負担が安くなるために自己負担の格差が生じていたのですが、医療療養病床も介護療養病床と同様に、次回の改定で、食事やホテルコストが徴収されるようになったために、この格差の問題は解消される見込みでした。しかし、介護保険制度は1割負担で、医療保険は2割負担ということになれば、同じ環境で同じサービスを受けていても、今度は、医療療養病床の自己負担は、介護療養病床と比べ3〜4万円高くなってしまいます。
この2つの療養病床の問題は、そもそも対象者に全く違いのない2種類の制度が存在していることに、その根本原因があるのは明らかであり、将来的には高齢者を対象とした医療療養病床の社会的役割は縮小していくと考えられます。
もう一点は、介護保険制度への影響です。この後期高齢者医療制度の保険者が市町村になるということは、将来的な介護保険制度との一体化が視野に入っているということです。将来的に介護保険の負担割合が2割になることは、恐らく避けられないと思いますし、高齢者医療・介護の保険財政は一本化して、市町村ごとに保険料が決められることになるでしょう。
現在検討されている制度改正も、最終的なものではありません。超高齢社会の社会保障をどのように行うのかの議論は、まだ始まったばかりなのです。
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厚生労働省は医療制度改革の試案を発表し、12月上旬までに改革大綱が策定される予定になっていますが、その中で、医療保険適応の療養病床においては、介護保険適応の療養病床と同様に、食費・居住費の一部を保険適応外の自己負担とする方針が、出されました。
概要は以下の通りです。
@ 療養病床に長期入院する70歳以上の高齢者の食費・居住費の一部を保険適用外の
自己負担とする
A 12月上旬に策定する医療制度改革に関する大綱に盛り込み、2006年の通常
国会に関連法案を提出して同年10月からの実施を目指す
B 食費と保険一割負担に加え、調理費の2万2000円と光熱・水道費の1万円が
上積みされ、自己負担が9万6000円程度に増えると試算
C 低所得者には、自己負担の一部免除などの救済措置
この内容だけでは、よくわからない方も多いと思うので、この療養病床の現行の制度を少し整理すると、療養病床には介護保険対象の療養病床(以下 介護療養病床)と、医療保険対象の療養病床(以下 医療療養病床)があります。介護療養病床については、介護保険法の改定で、この10月から食費や光熱費等のホテルコストは、自己負担となっていますので、自己負担が大きく違い、現場からは不公平だと言われていますので、この改定は当初から予想されていたものです。
長期入院とホテルコストの問題はこれまでも議論されており、医療療養病床でも6ヶ月以上の入院については、ホテルコスト見合として入院基本料の15%は自己負担(特定療養費)となっているのですが、次回の改定で、入院時からホテルコストが徴収さますから、医療療養病床の特定療養費については廃止される可能性が高いと思います。
今回、厚生労働省では、この改定によって、自己負担が3万2000円上乗せされ、9万6000円程度になると試算していますが、これは医療機関によって大きく違っています。特別養護老人ホームは福祉施設ですから、その他費用の徴収内容は大きく規制・制限されていますが、病院では、おむつ代や居室代、個別のテレビ代、洗濯代などなど、その他たくさんの別途費用が徴収されています。ですから、恐らく4床以上の多床室でも、自己負担は平均15万円以上になるのではないかと思います。
そもそも、この医療療養病床と介護療養病床は、医療が重点か介護が重点かによって分けられ、介護療養病床は要介護認定で要介護状態であると認定されていないと利用できないという違いがあるのですが、実際の入院者にはほとんど違いはありませんし、多くの病院では、この医療療養病床と介護療養病床を併設しています。
また、療養病床といっても、医師の常時の医療監視が必要な方ばかりではなく、特別養護老人ホームでも対応できる人は多いようですから、個室の特別養護老人ホームが13万円程度であることや、特別養護老人ホーム入居中に医療ニーズが高くなり、退居を迫られ行き場がなくなる高齢者が多いことを考えると、実際は、要医療度や介護度で分類されているわけではなく、現場が混乱していることがよくわかります。
その上、今後は医療法人にも老人ホーム事業が解禁になりますから、一般病棟との併設や訪問診療の充実等、医療ニーズの高い高齢者に対応した有料老人ホームも増えてくることが考えられ、多床室で高額な自己負担の療養病床は、その社会的役割は小さくなっていきます。
医療制度改定や他の法改正を見ていても、医療給付費削減、社会保障費削減のみが大きくクローズアップされていますが、同時に制度全体を整理・統合し、入居者の住み分けや、制度の狭間にある高齢者への視点が必要になります。今後は、介護療養病床と医療療養病床の統合、入院対象基準の明確化、療養病床数の減少等が、大きな流れになっていくと考えられます。
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10月31日に、障害者自立支援法が成立しました。これまで障害者に関する施策等を定めた法律は、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、児童福祉法等し、障害種別によって、その根拠法が分かれていましたが、障害種別に関わりがない共通のサービス(ホームヘルプ・ショートステイ・入所施設等)については、この自立支援法に一元化されることになりました。施行は18年の4月です。
サービスを受けるためには、以下の手続きが必要となります。
@給付を受けるためには、障害者又は障害児の保護者は市町村等に申請を行い、市町村等の支給決定等を受ける必要があること。
A障害福祉サービスの必要性を明らかにするため、市町村に置かれる審査会の審査及び判定に基づき、市町村が行う障害程度区分の認定を受けること。
B障害者等が障害福祉サービスを利用した場合に、市町村はその費用の100分の90を支給すること。
これらのサービス利用に対する負担は、前年度の収入によって判断されていたため、その9割以上は無料でサービスを受けていたのですが、自立支援法では、原則一割負担となるために、大部分の障害者は負担増となります。原則一割となると、所得の少ない障害者にとっては大きな負担となりますし、一律に障害者区分を認定されてサービス枠を決められてしまえば、これまで受けていたサービスを受けられない方も出てきますから、
障害者の各種団体は大反対をされています。
この支援法の是非や問題点については、他のHPに譲るとして、障害者自立支援法が制定された本当の理由は、介護保険財政と大きな関係があります。お気づきになったと思いますが、この給付方法は介護保険制度と全く同じです。将来的に介護保険制度との統合を視野に入れて、自立支援法が制定されたことは明らかであり、厚生労働省もそれを表明していますから、近い将来、統合されることになると思います。
介護保険制度設計において、当初から被保険者つまり何歳から介護保険料を負担してもらうのかが問題となりました。健康保険と同じにしたかったのですが、介護保険制度を全く利用する可能性のない20歳や30歳の若年層に対して介護保険の保険料を徴収することに抵抗があったため、現行の制度では、第一号保険者が65歳以上、第二号被保険者が40歳以上となっています。
しかし、これでは、将来要介護高齢者が増加した場合介護保険財政が持ちません。健康保険制度と同様に若年層からも保険料徴収する必要があり、そのためには、若くして交通事故で障害となっても介護保険制度が利用できるような体系に変更する必要がありました。つまり、介護保険制度と統合して若年層も利用できるように、障害者自立支援法が制定されたのです。
障害者自立支援法を理解するには、介護保険制度との統合という視点から見るとよくわかります。この統合にあわせて、保険料負担は、健康保険や年金保険と同じように、若年層にまで拡大されることになります。
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11月1日に、高齢者虐待防止・養護者支援法が成立しました。
同法では、身体的虐待や養護の放棄、心理的虐待、性的虐待、財産の無断使用を虐待として定義しており、虐待により、高齢者の生命や身体に重大な危険が生じている場合、市町村長に自宅などへの立ち入り調査を認めるほか、そうした高齢者を発見した施設職員らには、市町村への通報を義務付けています。
虐待と言えば、現在、児童虐待が大きくクローズアップされていますが、この高齢者虐待についても、高齢者人口、特に要介護高齢者の増加とともに、増加の傾向をたどっており、大きな社会問題となっています。
成立に、少し手間取ったと言う感は否めませんが、ともあれ定義や市町村の役割、警察との連携、立ち入り調査等を規定した法律が定められたことは、一定の前進だと言えます。しかし法律の制定だけで、虐待がなくなるというものではありません。
老人ホーム等の施設内の虐待も対象とされていますが、やはり多いのは『介護拒否』を含め、家族や介護者から受ける虐待です。この虐待の内容については、いくつかの分類は可能ですが、それぞれにそれぞれの原因や理由があります。頭が下がるほどの献身的な介護をされていた家族が、ある日突然切れてしまうこともありますし、虐待をされている高齢者が虐待する家族を庇うといったケースもたくさんあります。多くの方は『とんでもない家族だ』と思われるかもしれませんが、家族だけの責任だけではないというケースも多いのです。しかし、その結果、『もう少し様子を見て』『家族と話し合って』と問題が先送りされ、虐待死や取り返しのつかない状況になるというのが、児童虐待を見ていても良くわかります。
それぞれのケースをしっかり見ていくということがケースワークの基本なのですが、特に虐待が明らかでや命に関わる可能性のある場合、『すぐに離す』『とりあえず離す』ということが必要だと思っています。残念ながら、責任の所在やプライバシーを云々しているような状況ではないのです。
この強制は民間ではできません。これは行政措置の問題です。そして、ここにこれからの社会福祉法人の大きな役割があると思っています。地域包括支援センター等に、高齢者虐待防止支援センター等の業務を委託するようですが、現在の業務でさえ大変な状態の支援センターだけで、この問題を抱えることは、実質的に不可能です。
この問題の解決には、必ず中長期的な保護施設は不可欠です。介護保険制度に移行しても、特別養護老人ホームには、行政の措置枠が残っています。ある程度の市町村には虐待対応専門の特養ホームを指定し、行政と福祉の立場で、ある程度の強制力と機動力を持ったチーム編成を検討する必要があるでしょう。
虐待は、本人にとっても家族にとっても身体的にも精神的にも追い詰められていきます。制度や仕組みをつくるだけでは、何の解決にもなりません。家族や高齢者を追い詰めないように、相談窓口や介護サービスを充実させるとともに、国レベルではなく、各市町村で、この問題にはしっかり腰をすえて取り組んでいただきたいと思います。
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厚生労働省は、10/19に、平成18年度の医療制度改革の試案を発表しました。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/10/dl/tp1019-1c.pdf
予想されていたことですが、改革は医療費を前面に出して、高齢者の負担が大きくなっているのがその特徴です。内容の詳細については、新聞記事や厚生労働省から出された資料をご覧いただきたいと思いますが、これ問題は、医療制度だけでなく介護保険制度や有料老人ホーム事業にも大きく関係してきますので、そのポイントに少しふれたいと思います。
まず、窓口負担率の引き上げですが、年齢や所得水準による差はありますが、現行の1割負担から原則は2割負担という案が基本です。この流れで介護保険の自己負担も、おそらく次の改正の時には2割〜3割へと引き上げの議論が行われる可能性があります。現在の介護保険制度の一割負担に対して、低所得者に対する減免措置は小さなものですが(生活保護対象となる)、改正時には低所得者に対する配慮を増やして、原則2割という案が出てくるでしょう
次に、長期入院(療養病床)の高齢者に対する食費・居住費を保険適用外とし、原則自己負担化するとしています。療養病床は医療保険適用と介護保険適用があり、ここでは医療保険適用病床の話ですが、長期療養病院は、特別養護老人ホームと違い、生活用品や差額ベッド代等のアメニティ費用が高額なところが多く、これに食費・居住費が上乗せになれば、かなりの自己負担額になることが考えられます。あいまいな一律のアメニティ費用を見直す機会にはなると思いますが、その収入に頼っていた施設・病院は、非常の厳しい経営判断を迫られることになるでしょう。この結果、高齢者が多く入院している病院は経営が成り立たず、事業閉鎖や倒産する病院も多くなるでしょう。
今回の医療制度改革は、高齢者をターゲットとしたものが多く、介護保険制度にも大きな影響を与えます。その成り行きをしっかり注視する必要があります。
今回は、試案ですが、詳細にわかり次第、ご報告いたします。
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