『認知症でも入れる有料老人ホームはあるでしょぅか?』『認知症になれば、入居中のホームを退居しなければならないのでしょぅか?』と、認知症に関するご相談を多くいたただいています。
ここでは、認知症について、理解していただくと共に、認知症と有料老人ホーム生活の関係について、解説いたします。
その1 認知症とその原因
認知症は、単なる物忘れではなく、病気の一種です。
その多くは『アルツハイマー病』と『脳血管障害による認知症』です。
認知症は、これまで一般的に『痴呆』と呼ばれていたのですが、侮蔑的で高齢者の尊厳を欠く表現だとして、平成16年に、その呼び名が『認知症』と改められました。
この認知症は、以下のように定義されています。
脳や身体の疾患を原因として、記憶・判断力などの障害が起こり、普通の社会生活がおくれなくなった状態
自然な老化によって起こる、単なる『もの忘れ』ではなく、脳の障害や病気によって起こるもので、様々な周辺症状によって、通常の生活が困難になるということが、大きなポイントです。
この認知症を発生させる要因は一様ではなく、その原因となる病気はたくさんあるのですが、最も多いのが『脳血管障害による認知症』と『アルツハイマー病』です。
脳血管障害による認知症は、脳梗塞や脳内出血により、その部分の脳の働きが悪くなることによって発生するものです。頭痛・めまい等の症状が同時に見られ、嚥下障害や運動麻痺・歩行障害等の神経症状を伴うことが多いのが、その特徴です。。また、梗塞した部位(つまり詰まった場所)によって、ある能力は低下しているが、別の能力は比較的大丈夫というように、まだら状に低下しており、記憶障害がひどくても、人格や判断力は保たれていることが多いと言われています。この症状は、脳梗塞等の発作が起こるたびに段階的に悪化していきます。
アルツハイマー病は、原因は不明ですが、脳の神経細胞が変性・脱落する病気で、そのために脳の萎縮が進行し、高度の知能障害や人格の崩壊が起こる病気です。
このアルツハイマー病は、高齢の女性に多く、もの忘れからゆっくりと進行していきます。
ですから、本人にも病気だという自覚がないのですが、症状が進むと、ガスのつけ方がわからない、外出すると家に戻れない、家族の名前がわからない等の全般的な認知症状を示し、ついには寝たきりの状態になります。
この認知症の高齢者数は、高齢化の進展に伴って、10年後の2015年までに100万人増えて250万人に、現在の倍の2025年には323万人に、そしてピークを迎える2040年には、400万人に達すると言われています。
現在でも、85歳以上の高齢者の4人に一人は認知症だと言われており、要介護認定者のおよそ2人に一人は『何らかの介護・支援を必要とする認知症のある高齢者』(認知性老人自立度U以上)とされています。認知症は特別な問題ではなく、身近な問題なのです。
その2 認知症の基本症状と周辺症状
認知症はどのような症状を発現させるのか?
その症状が悪化すると、様々な周辺症状が異常な行動が現れてきます。
認知症は、その人によって、様々な多彩な症状を示すのですが、基本症状とそれに伴って起こる周辺症状に分かれます。
基本症状は、全ての認知症高齢者に現れる症状で、『記憶障害』『見当識障害』『判断力の障害』等が挙げられます。
まず、記憶障害ですが、最初は少しもの忘れをする程度で、自然な老化に伴って起こる普通のもの忘れと変わりないのですが、次第に進行し、直前に行ったことや親しい人の名前がわからなくなる等、普通のもの忘れとは考えられないような症状がでてきます。また、見当識障害は、今が何時で、どこにいるのかということがわからなくなることです。
認知症が進行すると、判断力や思考力にも障害症状が現れてきます。簡単なお金の計算ができなくなったり、毎日していた料理ができない、包丁やガスコンロの使い方がわからない等、日常の生活にも介護が必要な状態になります。更に症状が進むと、言葉が出難くなり、言語の理解ができなくなる失語や、体は動くのに服を正しく着ることができない等の失行、また、家の中でトイレや台所の場所がわからなくなるといった失認等の症状がでてきます。
この基本症状の他に、認知症は様々な周辺症状を伴うという特徴があります。この周辺症状は、人によって大きく差がありますが、中には異常な問題行動を伴うものもあり、介護者にとっては、大きな負担となります。主な症状を挙げておきます。
認知症の周辺症状
妄想・・・『財布を盗まれた』等の取られ妄想や、『浮気をしている』『妻に男ができた』等の嫉妬による妄想で、身近な家族が対象になることが多い。
幻覚・・・実際にないものが見えたり、『子供が遊びに来ている』等の幻覚症状が現れるが、幻聴よりも幻視の方が多い
徘徊・・・家に帰れなくなったり、近所でも家がわからない等の原因が主だが、症状が進むと無目的で常道的な徘徊行動を伴うことが多い
異食・・・ティッシュや排泄物など食べられないものを口に入れる異食や、食べてもすぐにお腹がすくといった過食症状
抑鬱・・・意欲の低下等のうつ症状に似た症状の発現
その他・・介助者に対する暴言や暴力行為や、異常な性的な問題行動等
その3 認知症に対する介護
認知症の介護は、介護者に大きな負担がかかります。
介護のポイントを理解して、できるだけ楽をすることが長期介護には必要です。
認知症の高齢者の介護は、徘徊があると目が離せなくなりますし、何度も同じことを聞かれたり、時には暴言を吐かれるなど、介護者にとっては、身体的だけでなく精神的にもかなり大変です。
特に初期の段階では、介護者は最近の言動から認知症を疑っても、他人の前では異常行動がない場合や、一生懸命介護をしていても、『食事を食べさせてもらえない』『いじめられている』等の文句を、被害妄想から周囲にもらす等の行為も見られ、『虐待ではないか』と、介護者が孤立し、精神的に追い詰められていくという事例も少なくありません。
また、『認知症を知られたくない』『恥ずかしい』との思いが強く、認知症であることを認めたくないために、問題から目をそむけてしまうというケースも見受けられます。しかし、認知症の高齢者に対する介護は、長期間に渡りますので、一人で抱え込まず、介護保険サービスを利用する等、できるだけ介護負担を軽減することが、介護を長く続ける秘訣です。
認知症に対する介護のポイント
@認知症の高齢者に対する介護を理解する。
認知症の高齢者の周辺症状は一人ひとり違いますし、認知症の段階や種類によってもその介護方法は違います。しかし、これまでのデータの蓄積から介護のポイントや異常行動に対する対応方法が示されていますので、認知症高齢者に対する介護方法を理解することが必要です。
A他の家族や周囲の理解と協力を得る
認知症の介護は、ひとりで背負おうとせず、他の家族との連携は不可欠です。定期的に介護分担することや、距離の問題等で分担はできなくても、大変さを理解してもらい話し相手になってもらうだけでも、精神的に気分が楽になります。
B様々なサービスを利用する
認知症の高齢者を対象とした介護保険サービスとして、認知症高齢者を対象としたグループホームやデイサービスの他、特別養護老人ホーム等のショートステイも利用しましょう。また、周辺症状が激しい場合は、医学的に精神的治療とケアを専門的に行う老人性認知症疾患療養病棟もあります。その他、ボランティアグループや『呆け老人をかかえる家族の会』等の家族のための会等、様々なサービスや制度を利用して、ゆとりを持って介護を行うことが必要です。
その4 有料老人ホームの認知症に対する対応
認知症だから、有料老人ホームの対象外だということはありません。
ただし、ホーム毎に対応力は大きく違いますので、しっかりと確認することが必要です。
認知症に対する住宅施設は認知症高齢者対応のグループホームがありますので、有料老人ホームでは認知症の高齢者は入居できない、また認知症になると有料老人ホームから退居しなければならないと考えておられる方が多いようです。
基本的に、認知症は加齢に伴い発症する率が高くなりますので、認知症はすべて対応できないということであれば、老人ホームとしての役割を果していないことになります。ですから、『認知症の場合は入居できません・認知症の場合は退居が必要です』ということではありません。
しかし、認知症という病気の症状は、記憶障害や季節や時間・人がわからなくなる見当識障害、躁鬱などの感情障害など、人によってその症状は様々です。また、食べられないものを口にいれる異食行動、徘徊、幻覚・妄想などの周辺症状を伴う方もおられます。その介護方法や対応については、認知症のレベルだけでなく、身体レベルにも大きく関係し、寝たきりの状態であれば、問題行動が他の入居者に与える影響は少ないですが、若年層で自立歩行等の身体レベルが高い場合は、暴力や徘徊等の周辺症状が顕著になれば、どうしても他の入居者との大きなトラブルに発展する可能性が高くなります。
認知症の有無に関わらず、その問題行動が、他の入居者の安全や安心の暮らしを妨げるということになれば、現実的に有料老人ホームでの生活の継続は難しくなります。ですから、多くの契約書には事業者からの契約解除要件として
『入居者の行動が、他の入居者の生命に危害を及ぼす恐れがあり、
かつ入居者に対する通常の介護方法では、これを防止することができないとき』
と、されているホームが多いようです。
つまり、基本的に認知症になれば、すべて有料老人ホームで受け入れられないということではありませんが、特に入居時に身体的な自立度の高い高齢者の場合は、問題行動により共同生活が難しくなれば、退居を考えなければならないという可能性はあります。
ただし、最近では、認知症の高齢者を積極的に受け入れているホームや、系列のグループホームで対応する事業所も出てきていますし、その対応力や判断基準は有料老人ホームによって大きく違うようです。これは、入居時だけの問題ではなく、入居途中で事業者側から一方的に契約解除されると、ご本人にとってもご家族にとっても、大きな負担になりますから、可能性がある場合は、事前にケースや対応力をしっかりと確認される必要があるでしょう。
2005年09月04日 19:46
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